loader image
Close
file01

地域の見えない鎖は絆

フリーランス
Matsumura Ryo
東京都出身。震災を機に柳津町の地域おこし協力隊に就任。現在はフリーランスとして活躍。

空白の時間もまた時間

東京都内の家具メーカーで、空間デザインやスペースメイキング、営業に携わる仕事を経験してきた松村さん。これまでの暮らしとは異なる文化が息づく奥会津での生活に、初めはギャップを感じたと言います。


——「私が今まで通ってきた道は、決まった時間の中でどれだけ凝縮して濃度をあげていくかみたいなことをずっと習慣化されてきたんだなって。でもこっちの時間軸は、朝早いし夜も早いし、空白の時間もまた時間だし、時間軸の違いに最初は戸惑った気がします。地域の人たちが持ち合わせている時間軸とリズムに合わせていくのが大変でしたね。」

ないというのは、
何でもできるということ

物や手段がありふれた都市部では、休日もスケジュールが想定通りにこなせる。それに対し奥会津では、やりたい事があってもその手段から考えたり、物を作るところや一緒にやってくれる人探しから始めなければいけない事がある。

奥会津に移住し6年という月日が経ち、そのように語る松村さん。奥会津にあって都市部にはないものについて聞いてみました。


——「”ない”っていう事実があるっていうのをすごく感じています。東京にはいろんなものがある、田舎にはないものばかりだというのが普通の見方だと思うんですけど、東京から生まれ育った人から感じるのは『ないっていうことは何でもできるということ』じゃないかなと。——ないっていうことが実は美徳だったりするのかなと思います。」

若い世代のカルチャーを
前面に押し出す環境づくり

——「小さい時からこうであるべき、こうでなければいけない、ということには疑問を感じながら生きてきたので、背中を見せるではないけど、若い世代にいろんなことをやってもいいんだという事を教えてあげたいと思っています。」

幼少期から固定概念に対し疑問を抱いてきた松村さんにとって、地域社会の堅苦しさによって次世代の選択肢が狭められてしまうことに懸念を抱いています。

——「自分たちも疑問だなと思う習慣に関しては自分たちの所でしっかり止めて、若い世代には若い世代のカルチャーを全面に押し出せるような環境づくりに、地域の皆さんも取り組まれていると思います。」

若い世代が広い選択肢をもてる環境づくりが、新しい未来をつくり出していく。松村さんだけでなく地域の人たちもそれを理解し行動し始めています。

地域の見えない鎖は絆。
切るのではなく、少しずつ緩めていく。

——「地域社会には“見えない鎖”があると思っていて、地域の中で見えない序列っていうのが多分あるんです。——その見えない鎖っていうのは、地域特有の人間関係とか序列とか、それらが全てを包囲してる感じがするもので、理解はできても行動の指針にはならない。」

地域の人間関係を「見えない鎖」、そう話す一方で、松村さんはその鎖が「絆」でもあると続けます。

——「地域の良さってやっぱり絆の部分かなって思っているんですけれども、だからその鎖を外したり切ったりするっていうことよりは、少しずつ緩めて、でもその絆はしっかり残しておかないといけない。」

いろいろなことを感じる事を

大切にしてもらいたい

都市部での生活を自ら離れ、奥会津に移り住んだ松村さん。より地域を未来に紡いでいくには、地域に生まれ育った人だからこそできることが重要だと話します。

——「いろんな所に行って、いろんな人に会って、いろんな話を聞いて、いろんなことを感じることを今は大切にしてもらいたいと思います。よそ者にできることには限界があるんですけど、地域に生まれ育った人だからできる事がもっとあるとも思っていて。」

——「そして世の中にはいろんなキャリアがごまんとある、いろいろな。そのどれを選択しても正解だと思うし。だから今のうちは、枠を決めないで欲しい。勉強にしてもスポーツにしても仕事にしても恋愛にしても。枠を決めないで広くやってもらいたいと強く思います。」


取材:2020年10月
動画では、ここで紹介した以外にも地域おこし協力隊に入ったきっかけや奥会津の好きな所、なぜここに住み続けるのかなどさらに詳しいインタビューも収録。ぜひご覧ください。
play