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雪があることで、実は生活が豊かに

「森林の分校ふざわ」支配人
Fujinuma Kohei
「森林の分校ふざわ」支配人。
栃木県出身。地域おこし協力隊として只見町に移住、観光地域づくりに取り組む。

1日24時間しかない時間の中で、
時間を有意義に使える

——「本音を言うと2単位が欲しくてここに来ただけ。」
栃木県に生まれ、もともと奥会津や只見町にゆかりがあったわけではなかった藤沼さん。大学のゼミの一環として奥会津に訪れたのが、奥会津と関わり始める最初のきっかけです。

訪れるごとに地域の人たちと馴染んでいき、後に地域おこしのサークルを立ち上げます。社会人になった後も週末に奥会津に通う日々が続いた末、藤沼さんは地域おこし協力隊として移住を決意。


——「周囲の反対とか親の反対もあったんですけど、自分の年齢的にいま行かないとなかなか今後行けないなっていうのがあって。じゃあもう、一回行ってダメだったらまた栃木に戻ればいいやぐらいの、すごい軽い感覚で来ちゃったので——。この地域の方も、住めとか面倒みてやるからとか言ってくれる人も多かったので、最初は軽い気持ちで来ましたね(笑)。」

宇都宮で働いていた頃、毎日の通勤に片道車で50分の時間をかけていましたが、運転して移動するだけで過ぎていく時間がもったいないと感じるようになります。
——「移動時間っていうのが僕の中で無駄な時間だと思っていたので、1日24時間しかない時間の中で、時間を有意義に使えるんじゃないかなと思って、こっちに来ました。」

同化同調してしまうと
その良さも
見えなくなってしまう

最初は、地域の方々も外部から訪れた人に対し慣れない部分があったそうですが、学生を連れて訪れる度に徐々に受け入れる土壌が作られていきました。

——「僕らの役割としては——、外からの視点というのを持ってくることかなと思ってます。」

移住者としての役割について、藤沼さんはこう考えています。

——「都度自分の生まれた所とか東京に帰ったりしてるんですよ。というのは、ずっと365日この集落とかこの町から出ないで過ごしていると、やっぱり町の人と同じ考えになってしまうんです。そこは、僕らみたいな移住者の役割としては、都会に出て向こうの考え方や感覚を取り戻してからまたこの集落に帰ってくるっていうことをしてると、『あぁ、これが都会の方の考え方なんだ』とか、この集落に刺激を与えることになると思うので——。」

——「良いものはあるんですけどその良いものを生かしきれていないっていう現状があるので、同化同調してしまうとその良さも見えなくなってしまう——。」

必ずしも移住した地域の全てを受け入れるのでなく、自身のアイデンティティを持ち共有することで、地域の良いところを再認識する事ができます。

都会に住んでるだけじゃ
絶対できない
経験がここならできる

かつて小学校の分校だった森の分校ふざわは、昭和57年に廃校となってから、現在は山村ならではの体験ができる宿泊施設として運営中。その魅力と今後の展望について、藤沼さんはこのように話します。


——「田舎に住んでいる人たちって、ものすごい得意な技術とかものすごい面白い文化がいっぱい残っていて・・・それがいま閉じようとしているんですね。——それをなんとか残したいというか。それを面白おかしくこの集落や町の人だったりがみんな参加して、それぞれ得意な技術とか得意なことを使って、ここでお客さんと一緒に体験したりとか、っていうことができたいいいなと思います。——都会に住んでるだけじゃ絶対できないような経験が、ここじゃめちゃめちゃできるので。」

雪がある事で
実は生活が豊かに

——「一番は雪。雪があることで、四季の感覚が研ぎ澄まされてきて——。日本は四季があるから良いって言いますけど、日本の四季を究極に体感できるのが奥会津だと思いますね。」

世界にも誇る積雪量を持つ奥会津。雪のある暮らしは辛く険しいものではなく、その雪の恩恵を受けた豊かなもの。雪によってもたらされた技術や文化が、奥会津には多く残っています。

——「ねっかっていうこの町の特産物、米焼酎があるんですけども、それを雪に1時間突っ込んでおけばキンキンに冷えた焼酎が飲めますし。雪があるから保存食の文化がある、じゃあ、その保存食の文化を体験にしちゃおうということで打ち豆体験っていうのをやってみたり。雪があることで生活は実は豊かなんだよということを発信していきたいなと——。」

奥会津は
ライフスタイルを
選べる場所

——「実は、奥会津はライフスタイルを選べる場所なんですよね。」

川沿いの集落に住んでみたり、林道の中のポツンとした一軒家に住むなど、自分の好きなスタイルで住めるというメリットを語る反面、生計を立てるために必要な能力を持ち合わせることも大切だと、言葉に力が入ります。

——「いろいろな勉強をして、蓄えた知識を奥会津に持ち帰って来てほしい」

奥会津に住む次世代に向けてはそんな願いを持ち、逆にIターンなど外部から移住する方へも、自分が生きていくための能力を身につけて来ることを勧めています。

——「よく僕が外部の人に言っているのは、『自分の持ってる技術を生かせる仕事を作れるようになってから来てくださいね。』ということ。」

そして、やりたい事への信念を貫くこと、負けない意思を持つこと、奥会津で事を成し遂げるにはそんなメンタルも必要だと伝えます。

取材:2021年12月
インタビュー動画では、ここで紹介した以外にも雪のある奥会津の暮らしの魅力、森の分校ふざわの体験エピソードなどさらに詳しいインタビューを収録。ぜひご覧ください。
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