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人との付き合いは貴重なつながり

金山町移住支援センター
移住コーディネーター
Kouzashi Kaori
会津若松市より移住。自身の移住体験を生かし、金山町の暮らしや子育て情報を発信し、地域の内と外をつなぐ。金山町移住支援センター・移住コーディネーター

一人ひとりが自身の役割の大きさを実感できる

金山町移住支援センターで移住コーディネーターとして勤務する上指花緒里さん。彼女の日課は、センターの前にやわらかな文字が踊る手書きの看板を掲げること。JR会津川口駅前に建てられたセンターには、日々移住を検討している人たちが訪れる。「こんにちは」と相談者をあたたかく迎え入れる上指さん自身も、かつては移住者の一人だった。

「私は生まれも育ちも会津若松市です。高校を卒業して、関西の学校に進学。それから京都で働いていました。暮らしを見直すきっかけになったのは東日本大震災です。実家は福島県にありましたからとても心配でした。さらに、新潟・福島豪雨災害にも見舞われます。金山町には祖母が住んでいて、避難したという話も聞いていました。

しかし、関西では東北の災害はどこか遠い出来事のようでした。災害をニュースで目の当たりにして、『自然には到底人間の力は敵わない』と思うようになります。であれば、なるべく自然に寄り添った暮らしにシフトしていくのがよいのではないかと考えて、まずは会津若松市に戻りました」

会津若松市にUターンした上指さん。その暮らしの中で、「都会でも田舎でもない中途半端な感覚」があったと言います。遊びに行く中で次第に心惹かれていったのが両親の実家があった金山町でした。

「朝の只見川の風景はとても美しいんです。夏の時期の川霧にも心を奪われて。『ああ、もうここに住むしかないな』と思い、移住を決意しました」

温泉で偶然居合わせたおばあちゃんが赤ちゃんを抱っこしてくれる町

金山町移住支援センターで、上指さんは移住希望者の方と家を手放したい町民との相談に乗っている。移住希望者はどのような方がこの場所を訪れることが多いのだろう。

「女性お一人住まいの方や家族で訪問してくださる方が多いです。私はその方たちに空き家バンクや仕事の紹介をします。あとは、地区の行事や奥会津では欠かせない雪国の暮らしについて説明をします」

雪国の生活について、移住希望者の方はどのような反応をするのだろうか。

「実は移住相談に来られる方の中には、冬の奥会津を知っている方も多いんです。雪国生活も経験して、それを知った上で選んできてくださっている。他にも、『コンビニもないし、ドラックストアもないし、大きいスーパーもないけれど、大丈夫ですか』ということも率直にお伝えするのですが、この町に来たいと思ってくださっている方はそういうものがなくてもいいと思っていらっしゃる方がほとんどみたいです」

奥会津のこの場所では、どのような暮らしのワンシーンが紡がれているのだろう。上指さんに思い出深い1コマを聞いてみた。

「小さい子ども2人を連れて地域の温泉によく入りに行っていました。そうすると親戚でもないおばあちゃんが、『抱っこしてっから、頭洗っちまえ』と声をかけてくれるんです。小さい子どもがいるとお風呂に入るのも一苦労。そんな状況の中で自然と助けてくれる手がある。おそらく都会ではこうした子育てはできなかっただろうなと思うと、本当にありがたい気持ちになります」

上指さんは「奥会津には地域の伝統文化や風習を残そうとする意識がとても強い」と語る。独特の風習について説明してくれた。

「“人足(にんそく)”という、草刈りなどの地域貢献活動が根付いています。また、“百万遍”という子どもたちが数珠を回しながら歌を歌って各家々を回り、無病息災を祈念する行事もあります。他にも、“火の用心”と呼ばれている風習では、数えで6歳になる子が正月に『火の用心』と習字で書いて、各家を周ります。6歳を漢字に当てて「無災」とし、災害がないことを願っているのでしょう。子どもたちは書いた分だけお小遣いをもらえるので、楽しそうにしていますよ」

一人ひとりの役割の大きく、つながりが深い

奥会津に住む人ならではの特徴も感じているという。上指さんは微笑みながらこう続ける。
「奥会津の人たちは、みんな、人にすごく関心があると感じます。外で作業をしていると、おもしろがって『何やってんだ?』ってすぐに声をかけられるんです。また、移住者の方に対してもみんな積極的に話しかけていますね」

この地域には「人のことを知ろうとする意識が強い」と感じているという。そして、一人ひとりの存在の大きさもこの場所ならでは、だと感じている。

「奥会津は人が少ないので、 一人ひとりの役割がすごく大きいと感じました。例えば、地区の民生委員やスポーツ推進委員など色々な役割が回ってきます。また、子どもの学校ではPTAとして積極的に関わっている保護者の方が多いのも印象的でした」

移住者は、こうした人のつながりに対し、どのように感じるものなのだろう。上指さんは実体験やこれまで移住者と接する中で聞いた感想を口にする。

「役割が多いので大変なこともあると思いますが、職場と家の往復だけではなく、地域で人付き合いができたり役員の集まりで仲間ができたりすることは貴重なつながりですよね。色々な知り合いを増やせる点は、大きなメリットだと思います」

生きていく力を養える場所、それが奥会津

金山町へ移住し、移住支援にも携わり、この土地で子育てをする母親でもある上指さんは、奥会津で育つ次世代へどのような思いを持っているのだろう。

「ぜひ奥会津で育っていることへの誇りを持ってほしいと思います。こんなに古民家が残っていて、自然がすぐそばにあって、地域の人が助け合いながら生き、子どもたちを地域の宝としてみんなが見守っていてくれる環境はそうありません。

奥会津で生活していると不便なこともあると思いますが、暖を取ろうとしたら薪になる材料はたくさんありますし、水が止まったとしても至る所から清水が湧き出しています。たとえ災害が起きて、電気やガスが止まっても、温泉があるのでお風呂に入れるんです。そういった、何があっても自然に守られて生きていく力を養える場所だと、奥会津のことを誇りに思えるといいですね」

さらに、上指さんは子どもたちのために地域の大人ができることとして、最近強く感じていることがあるという。
「我々大人がすごく楽しそうにこの場所で生活をしていたら、子どもたちも奥会津で生まれ育つことに対して誇りを持てるようになっていくと思います。例えば、私は、心から楽しんで近場にある沼沢湖に入ったりキャンプをしたりするようにしているんです」

大人が自ら地域を楽しみ、充実した人生を生き切ること。それが子どもにも伝播する。上指さんの言葉には未来を照らす明るく強い意志が込められている。
動画では、ここで紹介した以外にもご自身の仕事の魅力や大切にされていること、奥会津の暮らしの好きなところなどさらに詳しいインタビューも収録。ぜひご覧ください。
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