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「自分らしさ」を大切に生きる

奥会津西方創作館 主宰
Ori Kiri Ori アーティスト
絵本作家
Hanzawa Masato
郡山市出身、多摩美術大学油画科卒。三島町に移住し、アトリエを構えて美術家として活躍。一枚の紙とハサミを使って、誰もが夢中になれる「Ori Kiri Ori(オリキリオリ)」という手法を開発し、立体アート制作やワークショップなどを手掛ける

すべての「自分らしさ」に価値がある

福島県郡山市で生まれ育ち、多摩美術大学油画科で学んだ半沢政人さん。中学校の教員を経て、奥会津の三島町に移り住んだ。一枚の紙とハサミを使って、無駄なゴミを一切出さない「Ori Kiri Ori(オリキリオリ)」を開発し、立体アート制作やワークショップなどを開催している。

オリキリオリに出会ってからは、作品展やワークショップを開催。人気を博し毎日忙しい日々を過ごしていると語る半沢さん。オリキリオリの魅力とはどういったものなのだろう。

「オリキリオリの1番大事なことは、一切切り抜かないことです。要は切り込みだけを入れて、ゴミを出しません。切り込み方が個性によって異なり、さまざまなものができ上がっていきます。それは、どういうことかというと、『オリキリオリには失敗がない』ということなのです。小さな子どもでも、高齢者でも、ハサミを使って切り込みを入れただけで、『作品』ができます。うまい・へたを超えた 1人1人の個性が生かされる。これは本当に素晴らしいと思っています」

夢に後押しされて辿り着いた運命の場所

半沢さんはどういった経緯で奥会津に移住したのだろう。
「『夢を見た』というのが直接のきっかけです。核戦争が起きて、見慣れた風景が灰に埋まっている世界に自分が立っているという非常に怖い夢でした。その夢を見て、『何のために生きてきたんだろう』という叫びのような激しい思いが込み上げてきたんです。目を覚ましてから、自分の人生を変えるタイミングだと思い至ったんです。中学校の教員をしていたのですが、しばらくしたら美術家として独立しようと思っていたので、『今がそのタイミングだ』と感じました」

奥会津に辿り着いたのも、「夢」がポイントになったという。
「美術家は自然から学ぶことが全てだ、という強い思いがあります。そのため、移住先としては自然豊かな場所を探しました。そんな時に再び夢を見ます。窓を開けたら、山が広がり、田んぼがあるという風景でした。

その後、奥会津の三島町で『アーティストに住む場所を提供してくれるところがある』という知り合いからの連絡があり、足を運びます。すると、夢で見た全く同じシュエーションがそこに広がっていました。『これこれこれ! 夢で見た風景と全く同じ』と思って、すぐに奥会津への移住を決めました」

縄文時代から人々が暮らす豊かな土地

半沢さんは奥会津へ移住して30年程経つが、「今でも美術家として、自然から学び続けている」と語る。
「奥会津に移住してから『飽きた』と思ったことは一度もありません。雪が大変だと思ったことはありますが、得るものの方がずっと多いです」

奥会津は昔から人々の営みを支えてきた場所だったと語る。
「縄文時代から人々が住んでいた遺跡が多く発見されています。火焔型土器が奥会津でたくさん出土しています。大昔から非常に生活がしやすい場所だったのではないでしょうか。

ダムがない時にはサケが川を遡上して、それを獲り燻製にして保存食にし、冬を乗り切ったといいます。また、今でもたくさんの木の実が採れる。縄文時代のような自給自足の生活をするには、非常に適した場所であるということが『奥会津らしさ』ではないかと思っています」

半沢さんは、自分自身も縄文時代のようなライフスタイルをしていきたいと意識していると続ける。
「極力お金を使わないような生活を模索しています。地産地消で、自給自足。循環型の暮らしを送っていきたいと思っています。田畑を作ることができなかったり商業施設がたくさんあったりするような場所では、自給自足は難しい。私にとって奥会津で生きる最大のメリットは自給自足の生活に近づけるという点だと考えています」

地域の外に出ることで「何もないところ」への見方が変わる

半沢さんが奥会津に移住した時には、『なんでこんなに何もないところに来たの』と言われたという。「ここは何もないところではないですよね。創作の源である素晴らしい自然がありますから」と半沢さんは言う。とはいえ、「そもそもの感覚の違いがあるため、なかなか伝わらないですよね」とも続ける。

「ここで生まれ育った人はこの環境が当たり前です。しかし私は、郡山市に生まれ育ち、大学は東京に出ていましたから、この自然はまったく当たり前のものではありません。

奥会津の子どもたちは一旦外に出てみてはじめて、『実は自分の生まれた奥会津の故郷には素晴らしいものがいっぱいあったんだ』と気がつくのではないでしょうか」

子どもたちには「いろいろなことにチャレンジしてほしい」と半沢さんは思いを語る。
「いろいろなチャレンジをしていくことで、良い面も悪い面も体験していくことができます。不思議なもので出会いは運命的なものでもあるんです。だから、どんなことが起きても悲観せずに、プラスの力にしていけるとよいのではないでしょうか。

また、失敗から学んでいけるといいですね。私もどん底に落ちたからこそ無心になって、パワーが湧いてくるような経験を幾度もしてきました。辛い思いや嫌な経験はしたくないものですけれど、それを体験したからこそ、プラスの力を得ることにもつながります。だから、怖がらずに、とにかくチャレンジしていけるとよいのではないでしょうか」

半沢さんは奥会津の暮らしに豊かさを感じているという。
「東京では1億円稼いで高層マンションの最上階に暮らせるかもしれません。奥会津には、そうした暮らしはありません。でも、山のてっぺんから大気が循環している景色を眺めることで、ダイナミックな感動が得られます。自然の豊かさ、森の恵みの素晴らしさ、湧水のおいしさを感じると、『本当に生きていてよかった』と思います。そんな感動を提供してくれるのが、この奥会津という場所だと思います」

子どもたちには、「自分らしさをエンジョイしていくとよいと思う。オリキリオリの『作品』と同じようにすべての個性が美しい。その自分らしさを誇っていってほしい」と半沢さんは願いを述べる。

そして、半沢さん自身も「自分らしさ」を大切に生きていきたいと語る。
「自分らしく頑張れば頑張るほど、夢で見たような灰色の誰もいない世界から離れていっているように感じます。緑豊かな命輝く世界になっていく。だから、私はいつまでも『自分らしく』、この人生を全うしたいと思っています」
動画では、ここで紹介した以外にもご自身の仕事の魅力や大切にされていること、奥会津の暮らしの好きなところなどさらに詳しいインタビューも収録。ぜひご覧ください。
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